トリコの身体から発せられる、荒々しい電磁波。
その中に存在している、凪海のように穏やかな『想い』を、いつも感じ取っていた。

「大好きだぜ、ココ」
腹が立つほど男前な笑顔で、臆面もなく告げてくる。

  そんな事……
     ……ボクだって、分かってる。

  分かっている…けれど……

「やめろ、気持ち悪い」
ボクの口から出るのは、裏腹な言葉ばかり。
しかも、こんなにもボクが天邪鬼になってしまうのは、トリコに対してだけなんだ。

  いつか、嫌われてしまうんじゃないだろうか?

そんな思いに囚われて、密かに怯えていると云うのに……
トリコの事を意識し過ぎて、どうしても素直に接する事が出来ない。

「ボクは、別に好きじゃない」
また嘘を吐くボクの顔を覗き込んで、トリコはニッ…と、笑った。
「そーゆー、素直じゃねーとこも可愛いよな」
そのまま近付いて来る顔に鼓動を跳ね上げて、思わずギュッと眼を閉じた。
期待と羞恥に顔が火照り、緊張でガチガチに固まった身体が見っとも無い程に震えだす。

─── と、ポンッと大きな手が頭に乗せられて、ハッと眼を開けた。
「ココが嫌なら、やらねーよ」

  酷く優しい低い声音。
  胸が締付けられる程に穏やかな瞳。

「………」
……トリコは、ズルイ……
きっとボクは、今にも泣き出しそうな情け無い表情になっている。

 大好きなのに……
 キス……して欲しかったのに……

おずおずと持ち上げた手で、トリコの胸の辺りの服を、ギュッ…と握る。
ボクには、コレが精一杯だった。

「……やっぱり可愛いな、お前は」
そう言って笑うトリコは、やっぱり物凄く男前で……やっぱり少し腹が立つ。

再び眼を閉じたボクの唇に、漸くトリコの唇が触れてくれた。
軽く触れて来る唇に有り得ない程ビクついて、震えは全然止まらないけれど……
そんなボクの全てを、トリコの大きな温もりが、ゆったりと包み込んでくれた。