見慣れたとは云え、トリコの食事風景には毎度呆れの混じった溜息が出る。
大量に作った料理が、次々と消えていく様は圧巻だ。

「ほら。コレで家の食材は、もう無いからな」
最後の皿を食卓に並べながら、後で食材確保に行かなきゃな…と、ぼんやり考える。

「うん、美味い! ココ、向こうの皿も取ってくれ」
ニコニコと嬉しそうに休み無く食べ続けるトリコに、「ほらよ」と示された皿を手渡すと、その手を掴まれて、そのままトリコの方に引き寄せられた。
「?」
どうした?と、問おうとしたボクの顔に、トリコの顔が近付く。
「いつもサンキュー」
そう言うなり、ボクの唇にチュッ…と、軽い音を立ててキスをした。

  ………………なっ!?

何してくれてんだ! 食事中に! いや、別に食時中じゃなくても……なんだって突然キスなんて!?
しかもマウストゥーマウスで…!

頭の中では怒鳴っているものの、軽い混乱で口を開くタイミングを失ったボクは……
  ふと、トリコの様子に気が付いた。

料理を食い散らかしている事には、変わり無い。
でもトリコの食べるスピードが、さっき以上に速くなっている。
食べ物を詰め込んで膨れている頬と青い髪から覗く耳が、面白いほど赤く染まっている。
眼は食卓に向けられているけど、明らかに意識はボクの方に向けられていて……
ソレを必死で逸らそうと、手当たり次第に料理を食べ捲くっている。

  照れているんだ。 盛大に。


自然、ボクの口元が緩んだ。
前々から子供っぽい所が有るとは思っていたけれど、図体に似合わず可愛らしい奴じゃないか。
咀嚼が間に合わない程に次々と料理に手を伸ばす姿に、クスリと笑みが漏れる。

「ゆっくり食べても、ボクは逃げないよ」
途端、トリコが食べ物を喉に詰まらせて噎せ返った。
「ほら見ろ」と言うべきか、ボクの言葉を深読みでもしたのか……
思わず笑ってしまいながら、トリコにお茶を差し出す。

咳込んで揺れる広い背中を擦ってやりながら、その頭も撫でてやりたくなった。