切欠なんて、何でも良かった。
何時からかなんて、もう忘れた。

   ─── ずっと、手に入れたいと思っていた。



ソファーに腰掛けたトリコの身体を圧し掛かる事で押さえ付け、トリコの唇をボクの唇で塞ぐ。
深く、軽く……唇を離す事無く、何度も角度を変えるキスを、半ば一方的に続けていた。
口内に舌を差し入れた時は流石に驚いたのか軽く肩を押されたりはしたが、抵抗らしい抵抗はされていない。
困惑で動かないトリコの舌を舌先で擽り、絡めるように誘いを掛ける。
ピクリと反応して躊躇いながら伸ばされる舌から今度は逃げて、ボクの口内まで誘い込む。
進入して来た舌に緩く歯を立てて舌先を合わせ、再びトリコの口内に舌を突き入れて深く口付ける。

  初めて触れ合ったにしては、随分と長い、濃厚なキス。

薄く開けた眼でトリコの様子を伺うと、戸惑いに開かれたままの瞳が隠しようも無い情欲に彩られている。
反応に依っては興奮性の毒でも混ぜてやろうかと思っていたが、その必要も無さそうだった。

仕上げにトリコの唇をペロリと軽く舐め上げて、ゆっくりと離れる。
濡れそぼったボクの唇を傷跡が残る耳元に滑らせて、甘美な毒を含んだ囁きを流し込んだ。
「ボクを……食べてみるかい?」

本気で言ってるのか? と、無言で問い掛けるトリコの瞳を、挑戦的な光を込めて見詰め返す。
「毒に中るのが、恐いか?」
「……んな事、ねーよ」
低いトリコの声と共に、ボクの視界が反転した。
ソファーに押し倒されて、トリコの重みが圧し掛かって来る。

押さえられる者と押さえ付ける者と、立場が逆転しても……
薄く笑みを浮かべる者と戸惑いを払拭出来ない者と、互いの表情は変わっていない。
「ココ……本当に…イイのか?」
この期に及んでまだ迷うトリコの頬に、そっ…と、片手を添えた。
かろうじて引っ掛かっている箍を取り払うべく、見上げる表情に柔らかさを混ぜて……
甘い声で、告げてやる。

「トリコになら、何をされても構わないよ」

容易く弾け飛んだ箍同様、トリコが喰らい付くようにボクの首筋に顔を埋めた。


   ─── 捕獲完了。

欲情に荒ぐ息遣いと忙しなく身体を弄る大きな手に、満足の笑みを深めて……
   ボクは、『極上の獲物』を抱き締めた。