時折、この想いを曝け出してしまいたくなる。


「ココ?」
トリコが不審気に問うて来るのも、無理はない。
友人が思い詰めた眼で頬に手を添えてくれば、誰だって何の真似かと困惑するだろう。
頭の片隅で冷静な自分が、「今のうちに誤魔化せ」と警告を出している。

……それなのに……

引き寄せられるように、トリコに顔を近付けてゆく。
驚きながらも突き放さない、彼の大らかな優しさにつけ込んで……
本当に、掠めるだけのキスをした。

何の真似だと問い掛ける真っ直ぐな瞳に、罪悪感と後悔が押し寄せる。
この想いは、彼を惑わせるだけの物だから…
     伝えてはいけない物だから……。

喉まで出掛かった「好き」と云う言葉を飲み込んで、彼を見返す瞳と心に無理矢理力を込めた。
「……ほんの冗談だよ。なんて顔してるんだ、お前」

皮肉っぽい笑みまで浮かべて、言葉を続ける。
「色事に縁が無さそうな食いしん坊ちゃんを、一寸からかってみたくなっただけだよ」

一瞬、トリコが傷ついたような表情をしたのは、見間違えだろうか?
直ぐに眉根を寄せたトリコが、グイッと手の甲で唇を拭った。
「なんだよ……悪趣味だな」
「ははは…」
トリコの言動に胸を刺されながら、笑って背を向ける。

「……ゴメン、トリコ」
声のトーンが変わってしまった事に、気付かれなかっただろうか?
振り返る事など出来る筈もなく、早く逃げ出したい脚を無理にゆっくり動かして、平常を装いながら其の場を離れる。

  刺し貫かれたように、胸が痛い。
  再び押し込められた恋情が、哀しく軋みを上げて泣いていた。