オレの想い人は、オレにだけ冷たい。
他の奴には温厚で人当たりの良い『優男』で通っているのに、オレが触ったり抱き付いたり…ましてやキスしようとしたりすると、速攻毒化して完全防御体制に入る。

まぁ、嫌われてる訳じゃ無いようだし、照れているだけなんだろうけど……
あんまり「おあずけ」が長過ぎると、無理矢理襲っちまうぞ。

…と、言うような事を、直接ココに訴えてみた。

オレの眼の前で、むぅ〜…と、むくれている顔も可愛らしい。
でも、今日は此方も引かないぞとアピールするように不機嫌な顔をして見せると、ココはちょっと困ったように眉を寄せた。
少しの間、無言の対峙が続く。

『今回も進展無しか…』と、オレが諦めの溜息を吐いた時、ココの身体がピクリと跳ねた。
「トリコ」
少し慌てたようにオレを呼び留めておきながら、オレが意識を向けると一瞬怯んだ顔を見せる。
いぶかしむオレから顔を逸らしながら、ココが告げた。
「……キスくらいなら………してもイイぞ」
「えっ!? マジ!?」
「嫌なら、しなくてイイ」
「嫌な訳ねーだろっ!!」
ガシッとココの両肩を掴み、『いただきます』と心の中で手を合わせる。
オレの方に向き直ったココが、僅かに躊躇いながらも静かに眼を閉じた。

…か……可愛いっ!!

白い肌が仄かに紅く色付いて(言うまでも無く、毒化している訳じゃない)、長い睫毛が微かに震えていて、薄い唇が誘うように艶めいている。
マジマジと見ると、本当に綺麗な顔立ちしてるよな。

思わず見惚れていたら、ココの眉が不審気に顰められた。
おっと…、折角お許しを頂いたのにコレで機嫌を損ねてしまったら、一生キスも出来やしない。
オレは慌てて顔を近付けて、ココの唇に口付けた。

柔らかな弾力も、唇の甘さも、予想を遥かに上回っている。
オレは心中で歓喜の雄叫びを上げながら、夢中でキスをした。

  ─── と、
ドスッと鈍い音を響かせて、鳩尾に強烈なボディーブローを決められる。

「誰が舌まで入れてイイと言ったっ!?」
憤怒の形相をしたココから、怒声と共に贈られる左ストレート。

 ……ホント、オレには容赦ねーな…お前……。

でもまぁ、肩怒らせて大股で立ち去る姿も、可愛いと思えてしまうのだし…
真っ赤に染まってるココの肌も、毒化の所為じゃないようだし……

めげる事と諦める事を知らないオレは、殴られた頬と腹を擦りながらも、満足の笑みを浮かべて次のアプローチを考えていた。