トリコが来た時の食事の後には、何時もの事だが大量の洗い物が残る。
それらを全て片付けて、ココがそっと客間のドアを開けると、既に部屋の明かりは落とされていた。
何時も唐突に来訪する旧友が、ゆっくり休めるように用意した大きなベッド。
そのベッドに身体を投げ出して、トリコが規則正しい寝息を立てている。
食べるだけ食べて早々に寝てしまう様が子供のようで、ココはクスリと笑みを漏らした。

─── と、すぅーとココの顔から笑みが消え、思い詰めた様な表情になる。
少しの間躊躇い、するりと客間に入った。
トリコを起さないように、音も無くベッドの傍に立つ。
起きる気配も無いトリコを見下ろす其の顔には、普段は隠している恋情が有り有りと浮かび上がっている。

初めて眠るトリコに近付いた日は、そっと彼の手を握り……その指先に、キスをした。
その次の日は、手の甲に。
更にその次は、額に。
鼻先に、目元に、頬に……
トリコが家に泊まる度に、気付かれないように細心の注意を払いながら、ほんの掠めるだけのキスを落としていた。

 そして今日は……
    ゆっくりと身を屈め、
       薄く開いている、その唇に……触れた。




気恥ずかしさに顔に熱が集まり、毒までも滲み出て来てしまう。
逃げるように客間を出て、扉を閉じた。




ココの気配が部屋から離れる。
その事を確認して、トリコは眼を開けた。

残された僅かな温もりを確かめるように、自分の唇に触れてみる。
「………まいったな」
ココが寝ている自分にキスしていた事は、ずっと前から気付いていた。
その度に理性を総動員して、寝たふりを続けていたのだが……流石に今回はヤバかった。

「あんまり可愛い事してると、本当に食っちまうぞ」

眠気もスッカリ飛んでしまった。
いっその事、今度は自分がココの部屋に、忍んで行って…しまおうか……。