今日の分の修行ノルマをこなし、オレは他の四天王達より少し遅れて研究所に戻った。
所長室のドアを開けた途端、チェリーベリーの赤い実をココが摘んで口に運ぶのが目に入る。
チェリーベリーは、極僅かな時期にしか実を付けない貴重な果実。
オレの大好物だ。
「あー!! ココ! オレにも食わせろっ! せめて半分!」 
叫ぶより早くココの両腕をガシリと捕まえ、少しばかり開いていた口の中に舌を突っ込んだ。
驚きに固まっているココの口の中を舌で探り、小さな実を探す。

あれ? ココの奴、もう飲み込んじまったのか?
なかなか見付からない。
それにしても………スゲー甘い!
チェリーベリーって、こんなに甘かったか?

もっとよく味わおうと、ココの頭を引き寄せて更に深く舌を入れる。
─── と、突然頭の中で警告音が鳴り響き、オレはココを離して飛び退いた。

「毒砲っっ!!!」
「おわっ!?」

何すんだ! 危ねーじゃねーか!
怒鳴ろうとしたオレは、ココの様子に言葉を飲み込んだ。
肩で息をしてガクガク震えながら、毒化で紅くなった顔を更に高潮させ、涙がいっぱいに溜まった眼でオレを睨み付けている。

「………トリコのバカ!! バカトリコ!!」

ココにしては陳腐な罵声を言い捨てて、部屋を飛び出して行ってしまう。
そんなココを半ば呆然と見送っていたオレの目の前に、ぬっと大皿が突き出された。
「食いたきゃ食えば?」
「あ?」
声の主は、少しばかりの哀れみと心の底から馬鹿にした表情を曝け出しているサニー。
そしてサニーが差し出している大皿には、山と詰まれたチェリーベリーの実。
「ガッつかなくても、たっぷり有るし」
「………」
全く気が付かなかった。
そして今も、目の前の好物よりも、涙目で震えていたココの姿の方が鮮やかに頭の中を占めている。

……ココに謝った方が、イイよな?
 ………許してくれっかな?

無言で摘んだチェリーベリーは、随分と酸っぱい味がした。