*トリコ世界だけど、少々パラレル気味


      black panther


鬱蒼と木々が茂る森の中。
道幅が徐々に狭まり、鳥や獣達の鳴き声や唸り声が大きくなる。
人間の立ち入りを拒否している危険区域の其の奥に、今回の獲物は潜んでいる筈だ。

前方の大木からゆらりと現れた四足の獣の姿に、トリコの脚がピタリと止まる。
しなやかな身体を揺らして近付いて来る大きな黒豹が、見る間に人の姿に変貌する様を確認し……
トリコは溜息を吐いて、天を仰いだ。

「……ココ」
バツの悪そうな表情で呼び掛けて来たトリコを、鋭利な瞳で見据えたまま、ココは腕組して問い掛ける。
「街に行くとか言っておいて、何処に行く気だ?」
「あ〜………道、間違えたみたいだな……」
「誤魔化すなら、もっと上手い言い訳を考えろ」
サクリと切り捨てるココに、トリコは再び溜息を吐き、困ったように頭を掻いた。
「今回の仕事は簡単過ぎて、お前が付いて来る程の事はねえんだよ」
ボリボリと頭を掻きながらのトリコの言葉に、この場に現れた時から不機嫌そうだったココの表情が、更に険しさを増す。
「逆だろ? かなりレベルが高いから、下手な嘘をついてまでボクを置いて行こうとしたんだろうが」
「……」
図星を突かれて黙り込んだトリコに眼を眇めて、ココは自分の脇腹を押さえて言った。
「余計な心配しなくて良い。ボクの傷なら、もう癒えている」
だから連れて行けと云う言葉を暗に含んで、ココの瞳がトリコを見据える。

そんなココを見詰め返し、トリコはココとの距離を詰めた。
脇腹に添えられたココの手に、トリコの手が重ねられる。
「………でも、痕は残っているだろう?」

トリコの声に後悔が滲んでいるのを聞き分けて、ココの顔が曇る。
愛しい者に傷ついて欲しくないと云う心情も、充分に解っている。
ココは顔を傾けると、トリコの眼の下の三本傷をぺろりと舐めた。
「……傷痕くらい、お前も残ってるじゃないか」
自分だけを甘やかそうとする恋人に対し、声に、瞳に、拗ねたような響きが含まれる。

だが、甘さは瞬時に溶解し、ココのもう一つの姿が持つ牙や爪のような鋭さが、強い光と共にトリコを捉える双眸に宿った。
「戦闘で傷を負うことより、足手纏いとして置いて行かれる方が屈辱だ」

   ………ああ、そうだったな。

大切な恋人である事に間違いは無い。
だが彼らの関係は、それだけでも無かった。

重ねていた手をココの腰に滑らせて、しなやかな身体を抱き寄せる。
そのまま唇を重ね、二度三度角度を変えながら緩やかに食む。

唇が離れた少しの間、間近で見詰め合い……トリコはココを放しながら告げた。
「獲物の居場所は、まだ結構先だ。だからって気を抜くなよ、ココ」
トリコの言葉に、ココは満足そうに顔を綻ばせる。
……と、ココの姿が、ゆらりと輪郭を変えた。

ビロードのような漆黒の被毛に生々しく残る傷跡を撫で、トリコは森の奥に足を向ける。
「行くぜ、相棒」

口端を持ち上げたトリコの声に、低い唸り声が応えた。







トリコ×獣化ココ。
公式サイトの未公開イラスト絡みで、かなり前にブログで書いた妄想を漸く形にしてみました。
子狼がパートナーアニマルになる前に、書き上げておきたかったので。
ココは「相棒」じゃなくて「伴侶」だもんな。