天然計算魔性美人


食卓一杯に並べられていたココの手料理を殆ど食べ尽くしたオレは、ふと周りに意識を向けた。
今まで食う事に集中していて気が付かなかったが、早々に食後の茶を飲んでいた小松が紅茶を継ぎ足すココの横顔をボォ〜っとした面で見詰めている。
昔っからココの傍に居れば、見慣れた光景だ。
蕩けた眼でココを見上げていた小松が、これまた蕩けた表情で口を開く。
「本当にココさんって美人……あ、いやっ…男の人に美人は失礼ですよね……えっと、とってもお美しい…って、コレもどうかな?……えっと、えっと、ココさんは凄く綺麗で上級のイケメンですっ!」
……なんて下手糞な口説き文句だ。
まぁ、小松自身口説いてるつもりも無いんだろうが。
アワアワとテンパっている小松に「そんな事は無いよ」と小さく笑ったココは、更に少し照れたように「有難う」と綺麗な笑顔を向ける。
言われ慣れている奴は、褒め言葉に対する返しも上手いものだ。
実際、小松はココの笑顔に真っ赤になって、淹れ直した紅茶を飲もうとして火傷するというベタベタな展開を繰り広げている。
小松。お前は十代のガキか。


昔から『キレイ』だの『カッコイイ』だの、ココに対する賛辞は傍に居たオレの耳にもタコが出来る程聞かされていた。
ココはナルシストでは無いが、自分の容姿が他者より端麗である事くらい自覚済だろう。
毒が潜むその体質から触れられる事に抵抗は有るものの、不必要に人を拒絶している訳でもない。
ココに見惚れながら溜息や感嘆と共に呟く者や、中にはヤッカミ混じりに揶揄る者にまで、穏やかな返答と柔らかな笑みを向け、実に見事に全員の魂を持って行く。
グルメフォーチュンで、ココの周りに群がっていた奴らがイイ例だ。
ただ当たり障りの無い返しをしているだけなのか、固定客を逃さぬ為の策略なのか……。

尤も、四天王としての腕っ節は勿論有るが、ココは基本的に穏やかで優しい奴だ。
さり気無く他人を気遣う言動や、滲み出る人の良さが外見と相俟って、更に人々を惹き付けているのも事実なのだろう。



「トリコ。食べ終わったなら、皿を片付けろ。その後で、薪割りと水汲みに行って来てくれ。お前が食べた分の食材調達も忘れるなよ」
………何事も、例外は有るようだ。
小松や占いの客に掛けている半分でも、オレにも優しい気遣いってヤツをくれてもイイんじゃね?
「ココ…お前、オレには容赦ねぇな」
片肘付いて不貞腐れた態度のまま口にすれば、一瞬キョトリとしたココは、直ぐにニッと口角を上げた。
「そりゃそうさ。ボクにとってトリコは『特別』だからね」
意味深な言葉と共に投げて来る、悪戯っぽい笑顔。

これじゃ、小松を笑えない。
顎を乗せていた片手で緩む顔を覆い、くらりとした頭を支える。

天然なのか、計算なのか。
他愛の無い言動に、一喜一憂させられる。
……ああ、本当に性質の悪い美人に惚れたものだ。







魔性の毒使い。
なんて艶っぽい響き。

コマ→ココっぽく書いてみたものの、小松はココの事を「凄い人だなぁ」と思っている程度でイイかなと。
寧ろ、ココの方が小松を可愛がっているコマココがイイ。
でも最終的にトリココは譲れない。